大判例

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広島高等裁判所松江支部 昭和27年(う)255号 判決

(イ)有罪の言渡をするにつき、刑事訴訟法第三三五条第一項には、単に罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示すべく命じてあるに止まるけれども、凡そ、証拠の証明は、各犯罪事実毎に個別的にこれを認めた証拠の標目を示すも、或いは、数個の犯罪事実について数多の証拠の標目を一括して掲げるも、或いは又、右両様の説明方法を併合するも、苟しくも、いずれの証拠によつていずれの事実を認めたかということが明白である限り、これを以て違法であるということはできない。所論に鑑み、本件訴訟記録を精査し、原判決中証拠の説明に関する部分を検討するに、原判示各事実を認めるに至つた証拠は、判文上自ら明白であり、原判決には所論にいうが如き法令違背の点は窺われない。(ロ)本件訴訟記録を精査するに、被告人の司法警察員に対する第一回供述調書と題する書面は、第五九丁以下に、昭和二七年六月二六日付、境地区警察署巡査部長村上清市作成に係るもの、及び第七七丁以下に、同日付、米子地区警察署巡査部長藤谷正一作成に係るものの二通あり、原判決の証拠の標目欄において、冒頭に犯罪事実全部に関し掲げた証拠のうち、被告人の司法警察員に対する第一回供述調書とは、右二通のうち前者を、又、原判示第一事実に関し掲げた証拠のうち、被告人の司法警察員に対する第一回供述調書とは右後者をそれぞれ指称せるものであることは、判文の体裁及び右各供述調書の内容に照し自ら明かである。仮に若し、所論の如く、同一の供述調書を重複して掲げたとするも、証拠説明の技術上必要ならざる労力が費されたものであるということができるに止まり、敢てこれを捉えて所論の如き法令違背の事項なりと論難するのは当らない。(ハ)有罪の言渡をするにつき刑事訴訟法第三三五条第一項に基いて証拠の標目を示すには専ら、罪となるべき事実に関する範囲のみを以て足ることは論を俟たないが、犯罪事実に関する証拠の外、情状に関する証拠の標目をも掲げることは、法律上毫も支障がないのみならず、寧ろ懇切丁寧なる証拠説明ということができる。本件訴訟記録中の身上調査表及び前科照会の件回答書と題する各書面を検討するに、それ等の各記載事項は、いずれも本件量刑に関する重要資料たるものというべく、原判決の証拠の標目欄に、右各書面をも掲げたことを以て採証の法則に違背せりとなす所論は当らざるも甚しい。

以上(イ)乃至(ハ)の三点に分つて説示せるとおり、原判決には、各所論にいうが如き法令違背の点はないので、論旨はいづれも採用の限りでない。

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